読解に陥りがちだった教材を、
「生徒自らが考える教材」へシフトしました。
日本教科書の「道徳 中学校」教科書は、新しい教材を盛り込んでいて、令和7年度から採用される道徳教科書の中でも、チャンレンジングな内容になったのではないでしょうか。 チャレンジングな内容とは、具体的には、男女共同参画からウェルビーイング、生成AI、ネットリテラシーなどです。
道徳といえば、子どもたちには古めかしい印象がもたれる教科だったと思います。その点、日本教科書は、新しい考え方や技術を取り入れたので、道徳が毎日の中学生の暮らしと非常に密接で、身近な問題に関係していて、毎日道徳的なことを考えていかなければいけないと感じるのではないでしょうか。
とくにウェルビーイングについては、令和6年秋の第212回国会(2023年10月23日)において、岸田内閣総理大臣が所信表明演説の結びで次のように触れています。
「持続的な賃上げに加えて、人々のやる気、希望、社会の豊かさといったいわゆる『ウェルビーイング』を拡げれば、この令和の時代において再び、日本国民が『明日は今日より良くなる』と信じることができるようになる。日本国民が『明日は今日より良くなる』と信じられる時代を実現します。」
岸田総理が初めてウェルビーイングについて所信表明演説で引用されたので、非常にホットなタイミングで教科書に取り上げることができました。他に先駆けて教材にできたということからもよかったと思います。
このウェルビングカードは、非常に馴染みやすいというか、大変とっつきやすい教材です。今回の特別の教科「道徳」は、対話することが基軸に置かれています。その点、ウェルビングカードは、対話を促進し、問題点を容易にするという意味でも、有効なツールになると思っています。しかも、このウェルビーイングカードは、日本教科書の各学年に収載されているのですぐに使えます。
教材のテーマとして、女性をたくさん取り上げたのも良かったと思います。それも、時代別にです。
さらに、QRコードをつけて動画をリンクさせたり、漫画の教材や四コマ漫画を掲載したりしてビジュアルを多用しています。活字離れといわれる現代の子供たちにもハードルが低く、理解しやすいのではないでしょうか。
これら新しい教材を提案した私たちの趣旨が、現場の教員の皆さんに理解していただくのを期待したいところです。
これからの未来を担う子どもたち。
彼ら自身も、社会も大きく変わっていく一方で、
仲間に囲まれ、前向きに未来を見つめ、
挑戦をするそんな姿だけは変わらずにいて欲しいと思い、
この表紙を描かせていただきました。
漫画家・三田紀房(みた のりふさ)
代表作は『ドラゴン桜』、『アルキメデスの大戦』など。
考え合ってほしいことにズバリと切り込む、その⼿段として「教材の視覚化」を図っています。
ドラマ仕⽴てで、よりリアルに内容が伝わります。
日常にありがちな場面の再現動画を収録。授業の導入部分で活用できます。
漫画にすることで、内容がすっと⼊ってきます。理解が進み、その分、グループで考え合う時間を多く取ることができます。
シンプルなタッチのイラストと、淡々としたストーリー展開で、教材のテーマに向かう⽣徒の〝問い〟をうながします。
グループワークで考えを交換し合い、話し合い中⼼にします。
そのために、自分自身への「問い」から「見方・考え方」を深めることができる教材を増やしました。
たとえば、「どうにかできない? ~ペットの殺処分~」(1年 P132~135)の教材は、次の①~④のように、授業を展開することができます。
動物好きでこの仕事をしていますが、
年間3万頭の殺処分がなくなることを目指しています。
手をつくしましたが新しい飼い主が見つからず、
悩んだ末に保健所に連れていきました。
殺処分施設を見学し、悲惨な状況を目の当たりにしました。
自分にできることはこれしかない、
と保護猫カフェを始めました。
発問で、見方や考え方が変わった、深まったことを実感させる。
哲学を道徳授業に活かし、「当たり前を疑い、深く考える」。
古今東西の哲学者の格言に触れながら、「哲学」的視点を通して、考えを深めます。
本書では、「自由」(1年)、「幸福」(2年)、「愛」(3年)について考えます。
各学年の巻末付録に、
「わたしたちのウェルビーイングカード」の26種類版(NTT提供)を、
道徳の授業で使いやすい「ウェルビーイングカード」として収載しています。
スマホゲーム中毒、SNSでの誹謗中傷、生成AIでの宿題、ネット取引の詐欺……。
こうしたネットトラブルからどう身を守るかを喫緊の課題ととらえ、リアルに描いた教材を各学年に配置しました。いずれも考えさせる内容となっています。
読書感想文を生成AIにほとんどまかせてしまった僕。でもこれは正しいこと?自由と責任について問う教材です。
遠くに住む友達の町が大洪水にのまれている!?
ネットやSNS にあがる情報は正しいか? 真実を見極めるにはどうすればよいか、を考える教材です。
私が通う中学校で行われた、大学生たちによる模擬国会。SNSを運営する事業者に対し、「利用者の実名登録を義務付ける」法案が提出されました。この法案に賛成? 反対?
法やきまりの意義について理解を進めます。
直接的・間接的な形で「いじめ」をとりまくテーマを扱っています。
とくに学校生活のなかで「いじめ」に陥りやすい場面を積極的に取り上げています。
中学時代、一度だけいじめに加わってしまった私。母となった今では、中学生の娘がいじめにあっていないか心配。
ある日、娘といじめについて話していたとき、過去の自分の行いがフラッシュバックし、息苦しくなった。娘に促され、全てを告白した私に娘は……。
自らの弱さを克服しようとする心の強さを学びます。
いじめられた経験をもつ人、子供がいじめられた経験をもつ親、いじめを止められなかった人、法律の専門家のそれぞれのコメントを掲載し、「なぜ、いじめがなくならないのか」について考えます。
いじめられた経験をもつ彼の「いじめはなくならない」という言葉には説得力がある。
それでもなお、「いじめはなくせる」と主張する私に、彼は「ありがとう」と言ってくれたが…。いじめ問題とともに、相互理解の尊さを学びます。
「いつも一緒に」(1年 P58−64)
「一通のメッセージから始まる物語」(2年 P57−59)
「“生きづらさ”と向き合う」(2年 P76−79)
「SNSでの誹謗中傷」(3年 P84−87)
「外見で決めないで」(3年 P71−74)
「人権とは何か」について考えたり、認識を深めるための教材を掲載しています。
また、「ダイバーシティー」、「LGBT」についても学びます。
「未来を創るために〜マララ・ユスフザイ 『国連スピーチ』〜」(1年 P84−87)
「『普通』の生活の向こう側」(2年 P126−130)
「ライフ・ロール」(2年 P84−87)
「夢桜〜荻野吟子」(2年 P30−33)
「外見で決めないで」(3年 P71−74)
「加藤セチと佐藤昌介 〜決まっていることはない〜」(3年 P20−23)
「豊かなれ阿賀の流れよ」(3年 P88−91)
人と自然とのかかわり方を扱った教材を充実させています。
自然愛護と環境保全のあり方について多面的・多角的に捉えることができます。
「ガラスの地球を救え」(1年 P136−139)
「『普通』の生活の向こう側」(2年 P126−130)
「富士山の、消えた『白い川』」(2年 P140−143)
「縄文杉に会いたくて」(2年 P144−147)
「気候変動で私たちができること」(3年 P16−19)
「森に起きていること」(3年 P146−149)
生命倫理や自らのあり方を考え合わせながら、「生命の尊厳」について考えを深める内容となっています。
人間だけでなく生物の生命についても取り扱っています。
「どうにかできない?〜ペットの殺処分〜」(1年 P132−135)
「ほっちゃれ」(1年 P140−143)
「命をつなげ『ドクターヘリ』」(2年 P132−135)
「語りかける目」(2年 P136−139)
「五つの誓い」(3年 P54−57)
「命をつなぐ」(3年 P142−145)
「不思議な光景」(3年 P150−155)
国際社会の平和と発展に寄与する態度を育てる教材を採用しています。
また、国際交流の話題を取り上げ、異文化理解を促す教材も用意しています。
「未来を創るために〜マララ・ユスフザイ 『国連スピーチ』」(1年 P84−87)
「百の診療所より、一本の用水路を〜中村哲という人間の生き方〜」(1年 P116−120)
「海と空」(1年 P121−126)
「あいさつの意味」(2年 P47−50)
「小さな巨人」(2年 P121−125)
「筑前琵琶修復師〜ドリアーノ・スリス〜」(3年 P128−131)
日本教科書では、道徳教育の大きな柱として「キャリア教育」を掲げています。
心も体も大きく成長する中学3年間のこの時期に、自分を見つめ、将来の生き方を探すことが有意義だと考えるためです。発達段階を考慮し、1年では「自己理解」、2年では「自己啓発」、3年では「自己実現」をテーマとした教材を主に採用しました。
叔父がいきいきと働く姿を見た主人公の目を通し、働くことの意義や将来の生き方について考えを深めます。
友達との会話から、あらためて自分の家族、家庭での役割について思いを巡らせるストーリー。
「友達に比べて、自分は家族に対してなにもやっていない。このままでよいのか……。」
仕事にやりがいを見いだせない私が、気に入って通う総菜屋のおばちゃんとの交流によって、自分の進むべき道を見つけ、実現に向け動き出すストーリー。
「パーソナリティー」(1年 P18−21)
「エンジェルは優しい味」(1年 P100−103)
「ライフ・ロール」(2年 P84−87)
「嵐の後に」(3年 P61−65)
18歳選挙権にともない、若者の政治的リテラシーや政治参加意識を育む「主権者教育」について重要と捉え、教材として取り上げました。
「選挙に行かなかった理由」についてグラフから読み取ります。
「誰のためにするのだろう」(1年 P92−95)
農地改革に尽力し、勤勉さや真面目さが幸福を引き寄せるという考えのもと、多くの人を救い、多くの人の心を耕し、働くことの喜びを育んだ偉人。
「天地と共に〜二宮尊徳〜」(1年 P88−91)
「報徳思想」は、明治の財界人から松下幸之助(パナソニック創業者)、稲盛和夫(京セラ創業者)など昭和を代表する経営者たちにも多大な影響を与えました。
破綻寸前の備中松山藩財政を、特産品の生産奨励、様々な産業振興策、通貨改革などにより再建した。武士や領民の教育に尽力。備中の聖人。
「領民を幸福にすることこそ」(3年 P12−15)
方谷の「至誠惻怛」の精神は、人権課題の多い現代社会でより求められています。
松下村塾を開き、共に学ぶ、自ら考える、旅で学ぶことを掲げ、初代総理大臣・伊藤博文など多くの偉人を育てた幕末期の教育者、思想家。
「自分のこの目で確かめたい」(3年 P34−39)
松下村塾の塾生たちが指導者となって身分制社会を終わらせ、現代につながる明治維新や文明開化をもたらしました。
日本初の女性医師。医師への苦難の道を乗り越えた情熱あふれる生き方は小説「花理み(はなうずみ」)や「命燃えて」の舞台で紹介され、人々に感動を与えた。
「夢桜〜荻野吟子〜」(2年 P30−33)
吟子の不屈の精神を今に伝える「埼玉県荻野吟子賞」が出身地の埼玉県で創設・運用されています。
「われ太平洋の橋とならん」の志を掲げ、世界の国々が友好関係を築けるよう尽力。女性の学ぶ機会を拡充。日本の代表的思想家・教育者。
「心を育んだ遠友夜学校〜新渡戸稲造の作った学び舎〜」(2年 P80−83)
学びたい子供たちのための「遠友夜学校」は、稲造と妻メリーの慈愛に満ちた教育思想とともに今も受け継がれています。札幌市では、令和4年に北海道初となる公立夜間中学「星友館中学校」が開校しました。
教師をしながら北海道大学で学び、理化学研究所の初の女性研究者となり、女性科学者の道を開いた。化学構造や化学反応で大きな功績。
「加藤セチと佐藤昌介〜決まっていることはない」(3年 P20−23)
世界的な女性科学研究者を育てるために、理化学研究所では「加藤セチプログラム」を創設・運営しています。
戦時中、看護師として三度も病院船に乗る。戦場では子供の声が聞こえなかった、花は咲かなかったと命の尊さをつづる。
「くちなしの花と、南十字星が指した道〜花田ミキ〜」(3年 P156−160)
看護教育、保健教育の普及に尽力したミキの生き方が、コロナ禍を経た今、再評価されています。
様々な挫折や失敗を乗り越え、人類の発展に貢献する世界一の会社をつくるという高い目標を掲げ、世界的な先端企業を築き上げた日本を代表する経営者。
「人生と心の在り方〜稲盛和夫〜」(1年 P28−31)
京セラをトップ企業に高めた先見性と技術力、破綻した企業を再生させた経営力、正しい生き方を探求する姿勢など、今も尊敬を集めています。
偉業や成功談だけでなく、人間の弱さや葛藤を吐露する姿などを知ることで、生きることの魅力や意味の深さについて考えます。
「百の診療所より、一本の用水路を」
(1年 P116−120)
アフガニスタンで診療所を開いた中村医師のもとには大勢の患者が訪れました。その多くは子供。子供の死を目の当たりにした中村医師は「ともかく水がないことには、人間は生きられない……」と、井戸を掘り、用水路を削り続けました。
「オレは最強だ!」
(1年 P22−27)
車いすテニスプレイヤー(2023年1月引退)である国枝選手の座右の銘は「オレは最強だ!」。大事なことは自信を持つこと。それにはまず、全力で取り組むこと。そして夢を持ち、目標を設定して努力することだと話します。
「マダム・バタフライ」
(1年 P112−115)
日本人デザイナーとして世界のファッション界で成功を収め、日本と日本人女性のイメージをも大きく変えました。故郷・島根の山で見た「蝶」を優雅と洗練の象徴としてあしらうなど、日本人のアイデンティティーを大切にしました。
「未来を創るために」
(1年 P84−87)
パキスタン出身の人権活動家。史上最年少ノーベル平和賞受賞(2014年)。マララさん16歳の誕生日に、国連本部に招かれて行った演説を紹介しています。
「全日本柔道チームTOKYO2020の挑戦」
(2年 P24−29)
「小さな巨人」
(2年 P121−125)
「五つの誓い」
(3年 P54−57)
「外見で決めないで」
(3年 P71−74)
川畠成道「迷わず選ぶ」(3年 P110−113)(ヴァイオリニスト)
ドリアーノ・スリス(筑前琵琶修復師)、「筑前琵琶修復師〜ドリアーノ・スリス〜」(3年 P128−131)
野沢雅子(アニメ声優)、「日本のアニメの力」(2年 P115−118)
巻末付録
「わたしたちの郷土」1年 2年 3年巻末付録
郷土を代表する人物、自然、建造物を紹介する「私たちの郷土」を各学年の巻末ページに配置しています。
「最初のページから開く」、「目次を開く」、「前回の続きを開く」が選べます。
音声の音量や読み上げの速さも変えられます。
指定した範囲を拡大表示できます。
すべての漢字に、ルビ(ふりがな)を付けられます。
書き込みやマーキングは保存できて、削除もできます。
ポップアップした表示画面で、学校行事や啓発運動に則して入れ替えができて、その目次から教材を表示できます。
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中学校1年
中学校2年
中学校3年
道徳科の授業は、物事を広い視野からとらえ、話し合うことを通して、人間としてよりよい生き方についての
考えを深める学習の時間です。
自主、自律、自由と責任、
節度、節制、向上心、
個性の伸長、希望と勇気、
克己と強い意志、
真理の探究、創造
思いやり、感謝、礼儀、友情、
信頼、相互理解、寛容
遵法精神、公徳心、公正、公平、社会正義、社会参画、公共の精神、勤労、家族愛、家庭生活の充実、より良い学校生活、集団生活の充実、郷土の伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度、我が国の伝統と文化の尊重、国を愛する態度、国際理解、国際貢献
生命の尊さ、自然愛護、感動、
畏敬の念、よりよく生きる喜び